フレンチトーストの話

今週は楽しくいろんなことを打ち合わせることが出来て楽しかった。

楽しすぎてベラベラ喋ってしまいそうなので、今週の出来事は割愛。

あ、久しぶりにオオギリバッティングセンターで生大喜利をした。

自分の好きな答えを一つでも出せて、楽しかった。


来週も楽しいことがたくさんあればいいな。

 


さて、以下は5月の壁際が考えていた話。

 

 

 

 


隣人はとても変わった人だ。

 


毎日メープルの匂いがするので、おそらく何かしらのスイーツを作っているのだろう。

見たことはないけど、たぶん女性の一人暮らし。女子力の高さがうかがえる。

 


そんな隣人のことで気になることがある。

壁が薄すぎて隣の生活音がよく聞こえてくるのだが、甘い匂いがするときに限って麺をすするような音がする。

1日3回。朝食、昼食、夕食だろうか。

 


ある日の夜、いつも通りすする音が聞こえたあとに大きな話し声が聞こえてきた。

「やっぱ、フレンチトーストをすすってる時間が一番!」

 


...?

フレンチトースト...

...すする?

 


頭の中での理解が追いつかず、思わず「は?」と壁に向かって聞き返してしまった。 

大きな声が出てしまったのだろうか、

隣人に気づかれてしまった。

「やば、隣の人にバレたかも」と騒ぎ始めた。

女性二人の話し声が聞こえてきた。

 


フレンチトーストをすする女とそのパートナーの女?

思考がグルグルしている間に家のピンポンが鳴った。

 


ドアを開けると女性が二人。

挨拶に来ましたと言ってきたので、まずは挨拶。

少し話が盛り上がってきたところで、フレンチトーストをすする件のことを聞いてみた。

 


30分ぐらい説明や熱弁があった。

長いのでまとめてみることにした。

 


隣人は女性で二人暮らし。

フレンチトーストを千切りにしてすすり食べするのが好きな女(以下すすり女と呼ぶ)とフレンチトーストの味も匂いも好きだが、食べずにただすすり女のために作って、そのときの湯気をひたすらに吸うのが好きな女(以下湯気吸い女)の二人。

すすり女にとって、毎日欠かさずフレンチトーストを作ってくれる湯気吸い女は最高のパートナーだと言う。

 


立ち話を終え、二人とも家に帰るのを見届けてからドアを閉めた。

まあ変な二人だが、この人たちなりに楽しく暮らしてるんだと少しだけ納得したような、していないような、そんな気分でいた。

 


先日の立ち話から数週間は経っただろうか。

夜遅くに家のピンポンが鳴った。

開けるとすすり女が一人で立っていて、「湯気吸いと喧嘩したので、泊めてください」と泣きながら言ってきた。

パートナーをそう呼ぶのかと思いつつ、一晩だけならと思い、泊めることにした。

 


あんなに仲が良さそうな二人なのに、どうして喧嘩をするのかと疑問に思い、すすり女に聞いてみた。

「湯気吸いがね、私のトーストを食べたんです~(泣)」とのこと。

湯気吸いも気の毒にと思い、たまには食べることもあるだろうと少しだけ湯気吸いの味方についた。

それがいけなかったのだろうか。

すすり女は、

「私のトーストは私のもの!湯気吸いには1枚も渡さないんだから!」と激怒し、

「湯気吸いのところになんてもう戻らない!しばらく置いてください!」と続けた。

 


すすり女の勢いに負けてしばらく家に泊めることにした。

 


そしてそこから1ヵ月経った今も、すすり女を泊め続けている。

泊め続けているからか、自分からすすり女にフレンチトーストを進んで作るようになり、その湯気をしきりに求めるようになった。

そしてこちらのフレンチトーストを焼く技術がどんどん上がっていく。

湯気を吸いながらフレンチトーストを作る時間が、幸せだと思えてきている。

 


すすり女がそうさせているのか。

このまま湯気吸い女になってしまうのだろうか。

 


...

そろそろ筆を置こう。

そろそろすすり女にフレンチトーストを作る時間だ。

今日も朝からメープルの甘い湯気をたっぷりと吸いながら。